提供開始:平成23年(2011年)4月1日
平成23年3月10日、富士見市第5次行財政改革大綱のパブリックコメントへ提言。
Webでの提供にあたって↓
電子自治体改革の推進↓
Webベースでの情報提供↓
PDFの問題点と情報作成の発想転換↓
情報提供の全体最適化↓
適切なナビゲーションの提供↓
無駄のない情報提供↓
電子申請・ハイブリッド申請の推進↓
市民参加の電子化・ハイブリッド化↓
行政評価等の公表↓
経済・労働政策の展開↓
これは、平成23年(2011年)3月10日、富士見市第5次行財政改革大綱(案)についてのパブリックコメントとして、富士見市総合政策部政策財務課へ提言したものです。
大綱(案)の文言程度の抽象論を論じても生産性が低いので、具体的な問題に踏み込んで提言する。
市政等に関する情報は、Webでの提供を基本とし、必要に応じ、紙媒体等でも提供する。Webでは、閲覧しやすいよう、HTML形式での提供を基本とする。
市公式サイトでは、PDF形式でのみ提供している情報が少なくないが、その形式は、印刷・紙媒体化して閲覧するのに適したものである。PDFファイルの作成方法によっては、スクリーンリーダー(音声読み上げソフト)に対応しない。閲覧環境によっては、ソフトウェアの動作が遅くなる、全く閲覧できない等の問題が生じる。
そもそも、紙媒体向けに作成したものをPDF化し、Webでも提供するという発想を根本的に改めるべきである。庁内で公務に供するもの、市民等に提供するものを問わず、Web、紙媒体等、双方での提供を視野に入れ、コンテンツ(文字、画像等の情報内容)を作成する。Webでは、HTMLファイルで提供し、必要に応じ、画像ファイル等を付加する。紙媒体でも提供する必要がある場合は、それに適した書式に調整し、印刷・紙媒体化する。紙媒体化したものは、PDFファイルもWebで提供する。
(参考)三井住友銀行Webアクセシビリティガイドライン
株式会社三井住友銀行は、そのWebアクセシビリティガイドラインにおいて、PDFに関しても、次の指針を定めている。なお、「関連するJIS」として、日本工業規格「JIS X8341-3 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ」の関連箇条が示してあるが、現時点では2004年版に対応しており、現行の2010年版と箇条が異なる。
PDFによる情報提供のアクセシビリティ指針 www.smbc.co.jp/accessibility/guidelines/index_06.html
Webベースでの情報提供、情報作成の発想転換を情報提供の全体最適化につなげる。広報紙、冊子その他の紙媒体を作成する場合は、Webで提供している情報又は提供予定の情報のうち、紙媒体でも提供する必要があるものを抜粋し、それに適した書式に調整して、印刷・配布する。
『富士見市行政経営プラン』については、市民にわかりやすいかはともかく、わかりやすく伝えようという姿勢は評価できる。
しかし、一つのコンテンツ、一つの冊子を考える部分最適だけではなく、情報提供全体、サイト全体における位置づけを考える全体最適の視点が必要である。
総合的かつ基本的な方針・計画として、総合計画(基本構想・基本計画・実施計画)、施政方針、部局運営方針等を、施策・計画−総合政策部・秘書室(www.city.fujimi.saitama.jp/40shisei/03sisaku/2010-0722-1439-127.html)、行政経営(www.city.fujimi.saitama.jp/40shisei/03sisaku/2010-0513-1735-138.html)等に立項する。
現状は、部局運営方針が「行政経営プラン」に埋没してしまい、その存在がわかりにくい。また、一見して、「行政経営プラン」という名称の計画があると誤認されるおそれもあり、紛らわしい。
『富士見市行政経営プラン』は、『富士見市の行政経営』等に改題し、内容構成も見直す必要がある。
市公式サイトの設計・制作にあたっては、内容構成をわかりやすくメニュー化するとともに、検索エンジン等から直接、各ページへアクセスしても関連情報を得やすいよう、各ページから関連ページへリンクする。すべての市民・利用者が市公式サイトを隅々まで閲覧・把握しているわけではない。ざっと見て、求める情報が見当たらなければ、無いと判断する人も少なくないことに留意する。
例えば、平成21年度進捗状況(www.city.fujimi.saitama.jp/40shisei/03sisaku/2011-0131-1552-52.html)へ直接アクセスすると、地球温暖化対策実行計画(www.city.fujimi.saitama.jp/40shisei/03sisaku/2010-0514-1535-138.html)のそれであることが、わかりにくい(右のメニューからリンクされてはいるが)。また、「平成21年度進捗状況|市政・まちづくり|富士見市」というタイトル(head要素内のtitle要素)は、富士見市の市政・まちづくり全般の進捗状況のようであり、不適切である。
市公式サイトに、内容の重複が見られる。新規作成時や更新時の手間・人件費、塵も積もれば山となるでWebサーバーの容量・コストを考えれば、無駄である。
例えば、行政経営(www.city.fujimi.saitama.jp/40shisei/03sisaku/2010-0513-1735-138.html)の「7 行政経営プラン」と行政経営プラン(www.city.fujimi.saitama.jp/40shisei/03sisaku/2010-0513-2016-138.html)である。
富士見市公式サイトのあり方(2010年7月、市秘書室秘書広報課へ提言)で指摘したが、教育委員会は、おおむね同じ内容のものが二つある。
富士見市教育委員会 www.city.fujimi.saitama.jp/15kyoiku/
教育委員会 www.city.fujimi.saitama.jp/35miru/01kyouiku/
教育委員会の委員(www.city.fujimi.saitama.jp/15kyoiku/2010-0513-1758-139.html)の教育委員名簿は平成22年12月24日現在であるが、教育委員会の委員(www.city.fujimi.saitama.jp/35miru/01kyouiku/gyousei/2010-0427-1026-137.html)の教育委員名簿は平成22年4月1日現在のままで、委員長の任期が更新されていない。
何年度版、何年何月何日版と作り分けて提供するのは意義があるが、現状は、無駄があり、市民・利用者の誤解や混乱を招くおそれもある。
行政手続きの電子化、電子申請・届出システムの整備にあたっては、個人情報の保護、情報セキュリティの確保を図るとともに、市民・利用者の利便性を十分に考慮する。
究極的な電子申請・届出システムでは、Webで申請・届出し、交付物がある場合、その電磁的記録をダウンロードして、手数料は電子納付する。
現状は、電子署名に必要な電子証明書やICカードリーダーライターが普及していない、交付物の受け取りや手数料の支払いのため窓口へ出向く必要がある等のため、ほとんど利用されていない。
当分の間は、電子化の過渡期と見て、アナログ的方法、デジタル的方法、双方を活用した、ハイブリッド申請・届出システムを整備する。
例えば、住民票の写し等の請求については、電子署名なしでも受け付け、住民登録されている住所で、代金引換で受け取ることができるようにする。窓口で即時交付されるものについては、電子申請の場合も、即時対応、即日発送する(閉庁日を除く)。受取人の負担が増し、利便性は低下するが、本人限定受取郵便とするのも一法である。本人限定受取であれば、住民登録地以外での受け取りや市外在住者にも対応できる。
すべて電子署名なしで受け付ければ、多額の費用を投入し、埼玉県市町村電子申請共同運営協議会電子申請・届出サービスを利用する必要はない。申請・届出ごとの送信フォームを用意し、暗号化して送信できるようにしておけば足りる。
現状は、電子署名が不要のものでも、最初に利用者IDを取得する必要があり、面倒なシステムである。また、遠隔地在住者が戸籍の附票の写しを請求する場合も、窓口での交付のみであり、附票の写しは請求できても、戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本)等は請求できないという、使いものにならないシステムである。
そもそも、その手続きを電子申請・届出できると知られていない、申請・届出方法がわからない、ということも少なくないであろう。公共施設、イベント会場等において、電子申請・ハイブリッド申請のデモンストレーションを実施する、個別相談に応じる等により、市民・利用者への周知を図る必要がある。
電子自治体基本構想(2010年10月、市総合政策部政策財務課へ提言)で述べたとおり、電子審議会、電子公聴会等、市民参加の電子化、アナログとデジタルとのハイブリッド化についても、実験的な取り組みを積極的に展開していく。
行政経営改革指針(第4次行財政改革大綱)(平成17年3月)に掲げられた「成果重視の行政経営を目指します」のうち、「電子市役所の推進」に示された「ITを活用した市民参加・協働」については、この6年間、成果が見られない。
電子掲示板システムについては、民間の無料サービスを活用すれば、費用はかからない。
電子掲示板への投稿者はアクセスした人の一部であり、大半は閲覧するだけの人(ROM:Read Only Member)である。当面の目標は、情報交換や議論の場としてよりも情報提供の場として充実させ、アクセス数、ROMを増やすこととし、職員、あるいは、事前に登録した市民が、積極的に話題提供や良好な雰囲気づくりをするのも一法である。
ブログを電子掲示板のように運用するという方法もある。職員がブログに話題(記事)を投稿し、それに対して市民・職員がコメントを投稿していく。一つひとつの話題(記事)、コメントは、それぞれ、電子掲示板のスレッド、レスに相当する。
費用の削減・最小化を図るとともに、支出された費用、実施された事務事業が十分な効果を上げているかの検証、行政評価が重要である。内部評価だけでなく、「事業仕分け」のように、市政にしがらみのない人による外部評価も継続的に実施・公表する。
総合計画(基本構想・基本計画・実施計画)、分野別の基本計画等については、「計画書刊行事業」から脱却し、施策の体系に沿って、具体的な事業の実施状況・評価、数値目標の達成状況等を毎年公表する。これまでのところ、ほとんどの計画の進捗状況等が不明であり、市の説明責任(自治基本条例第19条)が果たされていない。
次世代育成支援行動計画、地球温暖化対策実行計画は、それぞれ、次世代育成支援対策推進法第8条第6項、地球温暖化対策の推進に関する法律第20条の3第10項に基づき、毎年、実施状況が公表されている。国法の強制がなければ公表できないようでは、地方分権・地域主権時代の自治体としてふがいない。
財政基盤強化のためにも、地域経済の活性化、産業振興が重要である。経済・産業政策の抜本的な見直し、再構築が必要である。商業活性化ビジョン(平成16年3月)は成果が見られず、中心市街地活性化基本計画(平成17年3月)は反故にされている。
また、市の経済・財政は、市外への「出稼ぎ労働者」によって支えられている。失業、生活保護に陥らないよう、あるいは、速やかに再起を図れるよう、市内在勤者を含め、支援体制を強化する。
ビジネス・労働学習・職業能力開発の促進(2011年1月、市市民生活部協働推進課へ提言)で述べたとおり、地域経済の活性化や厳しい労働環境への対応のため、国・県・民間団体等とともに、コミュニティビジネス、起業、ビジネス実務、就職・転職、労働法・労働問題等に関する学習機会の提供、職業能力開発の促進を図る。
(参考事例)公共図書館のビジネス支援
公共図書館は、紙媒体、電子媒体を駆使して、ビジネスに必要な調査研究を支援することができる。
平成21年度(2009年度)、ビジネス支援図書館推進協議会(www.business-library.jp/)が、「第1回ビジネス支援レファレンス・コンクール」を開催した。「観光資源と特産品を活用した地域ブランド作りと地域活性化」、「素材にこだわる老舗とんかつ店の新戦略」、「利用者の特性や利用実態に即したウェブサイトの制作」等、六つのビジネス課題への回答を図書館員が競ったものである。
図書館員によるビジネス課題への回答事例集 www.business-library.jp/jireisyu/jirei.html
2010年7月。同年8月24日改訂。PDF形式、105頁。