第2次富士見市生涯学習推進基本計画への提言

提供開始:平成23年(2011年)2月11日

平成23年1月31日、第2次富士見市生涯学習推進基本計画のパブリックコメントへ提言。

Webでの提供にあたって
電子自治体基本計画
用語「市民参加」「市民参画」
数値目標の設定と実施状況・評価の公表
ビジネス・労働学習・職業能力開発の促進
まちづくり学習の拠点としての公民館等
図書館のハイブリッド化と利用支援の推進
市民参加の電子化・ハイブリッド化

●Webでの提供にあたって

これは、平成23年(2011年)1月31日、第2次富士見市生涯学習推進基本計画(案)についてのパブリックコメントとして、富士見市市民生活部協働推進課へ提言したものです。

Web版では、図書館のハイブリッド化と利用支援の推進↓に「(参考)大学図書館利用教育ガイドライン」を、市民参加の電子化・ハイブリッド化↓に「(参考事例)文部科学省の熟議カケアイ」を、それぞれ追加しています。

●電子自治体基本計画

20世紀末から21世紀にかけての情報通信技術革命は、情報・知識の流通において、文字や印刷術の発明・普及に匹敵する歴史的・構造的な変化をもたらしつつある。今後10年を展望する第2次生涯学習推進基本計画は、電子自治体基本計画としての側面をもつ必要があろう。

☆デジタル識字率の向上

読み書きの能力(リテラシー)に欠けると、学習・生活上、不利である。21世紀以降は、情報通信機器を利用したそれも含まれる。学校教育において子どもに対する情報教育が進められているが、情報通信機器を利用した読み書きのできない成人も少なくない。成人に対する学習機会・情報教育を市民・企業等とともに拡充し、デジタル識字率の向上を図る必要がある。

☆Webでの学習機会の提供

富士見市公式サイトのあり方(2010年7月、市秘書室秘書広報課へ提言)、電子自治体基本構想(2010年10月、市総合政策部政策財務課へ提言)でも述べたとおり、情報・知識・学習機会の提供サービスについては、その開催告知や申し込み手続きだけでなく、教材等もサイトで提供し、その場でサービス自体を受けられるようにする必要がある(eラーニング)。また、講師等と学習者との質疑応答、学習者間の情報交換・交流もできることが望ましい。

従来の学習機会は、特定の日時に特定の場所で提供されるため、利用が困難な人も少なくない。Webでの学習機会の提供により、早朝や深夜に自宅等のパソコンで学んだり、通勤途中にケータイで学んだりすることも可能となる。まさに、いつでも、どこでも、誰でも、何でも、生涯学習である。

(参考事例)毛呂山町の基礎学習支援

毛呂山町(埼玉県入間郡)は、小・中学生の学習に資する動画(アニメーション)を、情報推進室の職員がMicrosoft PowerPointで独自に制作し、Webで提供している。

基礎教育支援動画に関する毛呂山町の取組みについて www.town.moroyama.saitama.jp/www/contents/1287656309148/

もろやま 親子で学ぶ基礎学習 www.morotown.jp/
平成22年(2010年)4月1日開設。

(参考事例)大学の講義の公開

マサチューセッツ工科大学(MIT・アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ市)は、その講義の関連資料(動画を含む)を2002年9月からWebで無償公開(オープンコースウェア)。平成17年(2005年)5月から日本でも一部の大学が同様の取り組みを始めている。MITに比して日本の大学は貧弱であるが、登録手続きなしに無料で受講できる(単位認定等は行わない)。

日本オープンコースウェア・コンソーシアム www.jocw.jp/index_j.htm

(参考事例)インターネット市民塾

富山県では、県、企業、大学の協働により、平成11年(1999年)7月、「インターネット市民塾」を開設。市民が講座を企画し、Webで開講する「学びのフリーマーケット」である。受講は、有料のものと無料のものがある。市民講師も、人に教えることを通して、自らの学びを深めることができる。全国に同様の取り組みが波及している。

富山インターネット市民塾 toyama.shiminjuku.com/

地域学習プラットフォーム研究会 shiminjuku.org/
インターネット市民塾の研究、普及等を行う特定非営利活動法人(NPO法人)。

●用語「市民参加」「市民参画」

自治基本条例は「市民参加」という語を用いており、第5次基本構想等も、これにならっている。生涯学習推進基本計画では、「市民参画」という語を用いているが、整合性を図り、「市民参加」と改めた方がよい。少なくとも、5頁の自治基本条例に関する記述は「市民参加」とする必要がある。

●数値目標の設定と実施状況・評価の公表

計画案は、数値目標が欠如している。抽象論を展開するだけでなく、数値目標を設定する必要がある。

また、施策の体系に沿って、具体的な事業の実施状況・評価、数値目標の達成状況等を毎年公表する。第1次計画は、その実施状況・評価が公表されておらず、市の説明責任(自治基本条例第19条)が果たされていない。次世代育成支援行動計画については、次世代育成支援対策推進法第8条第6項に基づき、毎年、実施状況が公表されている。国法の強制がなければ公表できないようでは、地方分権・地域主権時代の自治体としてふがいない。

短期的な評価だけでなく、長期的な評価も必要である。例えば、20年前、30年前の教育の評価である。子どもを虐待する親やモンスターペアレントを育てた教育をどう評価するか。将来、現在の教育を評価するための資料も作成・保存しておく必要がある。

●ビジネス・労働学習・職業能力開発の促進

地域経済の活性化や厳しい労働環境への対応のため、国・県・民間団体等とともに、コミュニティビジネス、起業、ビジネス実務、就職・転職、労働法・労働問題等に関する学習機会の提供、職業能力開発の促進を図る。

●まちづくり学習の拠点としての公民館等

市民参加・協働のまちづくりを推進するため、公民館、市民交流センター、コミュニティセンターは、各地域におけるまちづくり学習の拠点としての役割を果たす必要がある。

富士見市等に関する地域・行政資料や、まちづくり・行政諸分野を中心とする図書等を収集・提供する地域図書館としての機能も整備する。

(参考)寺中作雄『公民館の建設』

公民館は、戦後まもなく、文部省社会教育局公民教育課長、社会教育課長を務めた寺中作雄によって構想された。その構想では、多方面の機能を持った文化施設であり、社会教育機関、社交娯楽機関、自治振興機関、産業振興機関、青年養成機関等、必要に応じ、色々な機能を持たせることができるものであった。

寺中は、その著書『公民館の建設 新しい町村の文化施設』(昭和21年(1946年)9月)の「五、公民館では何をするか」「図書部」の中で、次のように述べている。

新しく成立した町村の予算なども分り易く図示して公開し、税率や其の町村として実施している事業などを町村民に詳しく説明し、町村の人々が常にそれらの率や額を諳んじている位になれば町村政治に対する理解が行届き町村自治は自ら円満な発達をするに違いない。

そして、「公民館設立の最初の仕事は此方面から手をつけるべきであろう。」としている。

また、「集会部」の中で、町村民が町村政治の現状についての説明を聞き、これに対する希望や要求を出す「町村政懇談会」を奨励している。

●図書館のハイブリッド化と利用支援の推進

☆アナログ資料とデジタル資料によるハイブリッド化

図書館は、紙媒体・アナログ資料だけでなく、電子書籍等の電子媒体・デジタル資料も提供する。特に、富士見市に関する地域・行政資料については、専門図書館として責任を持って収集・保存・提供する必要がある。富士見市に関するWebサイトについても、民間のものを含め、定期的な収集・保存を進める。

(参考事例)国立国会図書館によるWebの保存

国立国会図書館は、平成14年度(2002年度)から国の機関、地方自治体等のWebサイトを収集・保存し、一部はWebでも提供している。

インターネット資料の収集(国立国会図書館)www.ndl.go.jp/jp/aboutus/internet_data.html

☆図書館利用支援・利用教育の推進

1990年代末までに、社団法人日本図書館協会図書館利用教育委員会が、「図書館利用教育ガイドライン」をまとめた(公共図書館版は「図書館利用支援ガイドライン」)。以来十余年、大学図書館を中心に図書館利用教育が進みつつあるが、公共図書館では富士見市を含め十分でない。

紙媒体、電子媒体等を活用した市民の主体的な学習・調査研究を促進するため、体系的かつ継続的に図書館利用支援・利用教育を進める。その際、市民、議員、職員等によるまちづくりに必要な調査研究にも資するよう留意する。具体的には、図書館情報活用講座の実施、パスファインダーの作成・配布等であり、いずれもWebでも提供する。

(参考)大学図書館利用教育ガイドライン

図書館利用教育ガイドライン−大学図書館版−(社団法人日本図書館協会)www.jla.or.jp/cue/gl-a.html
1998年8月、社団法人日本図書館協会図書館利用教育委員会。

●市民参加の電子化・ハイブリッド化

電子自治体基本構想(2010年10月、市総合政策部政策財務課へ提言)でも述べたとおり、電子審議会、電子公聴会等、市民参加の電子化、アナログとデジタルとのハイブリッド化についても、実験的な取り組みを積極的に展開していく。

(参考事例)文部科学省の熟議カケアイ

文部科学省は、審議会、公聴会等と連動した政策形成過程の一環として、平成22年(2010年)4月17日、「文科省政策創造エンジン 熟議カケアイ」を開設。所定のテーマについて、氏名等を登録すれば、誰もが自由に投稿できる電子掲示板である。

文科省政策創造エンジン 熟議カケアイ jukugi.mext.go.jp/

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