市民参加・協働の論点

提供開始:平成17年(2005年)7月1日

平成17年6月28日、富士見市総合政策部政策推進室へ提出。

Webでの提供にあたって
市民参加・協働の全体構造
市民活動・学習支援論
市民参加・協働論↓(市民参加の体系↓/審議会等の諸類型↓/学習から始める市民参加↓/多様な市民の参加↓)
市民参加のシステム設計
(参考)情報メディアの体系
関連ページ

●Webでの提供にあたって

これは、市民参加・協働の見方・考え方を私なりに整理したものです。平成17年(2005年)6月28日、富士見市総合政策部政策推進室へ提出しました。

未成熟なメモのため、わかりづらい点もあろうかと思いますが、ご了承ください。

Web版では、当サイト内等の関連ページへのリンクを追加しています。

●市民参加・協働の全体構造

☆まちづくり−公共の福祉(公益)の実現・増進−の諸活動
市民独自の活動・行政独自の活動(←市民参加)・市民と行政との協働

☆市民参加・協働論(広義)
まちづくりの担い手・市民のエンパワーメントとインボルブメントをめざす。
 *エンパワーメント(empowerment) 力をつけること。
 *インボルブメント(involvement) 巻き込むこと。
市民活動・学習支援論と市民参加・協働論(狭義)から成る。

☆市民参加と協働の関係
市民参加と協働(コラボレーション(collaboration))は、多義的である。富士見市自治基本条例第2条(定義)に定められているが、その相違は必ずしも明確でない。個人の行政への参加を市民参加、特定の団体(一つ又は複数)の行政への参加と行政の特定の団体への参加(行政から団体への補助は、一種の「資本参加」と見る。)を協働ととらえることもできる。市は、個人・団体の事務事業への参加と行政の特定の団体への参加を協働ととらえているのか。いずれにせよ、行政の特定の団体への参加を除き、協働は、広義の市民参加の一部と見ることもできる。
市民参加 個人→行政
協働   団体→行政 行政→団体

●市民活動・学習支援論

市民のまちづくり活動(市民独自の活動・市民参加・協働)に必要な資源の調達・運用を支援する。
 *市民のまちづくり活動に必要な資源
  人(自己・他者)=意欲×能力×時間
  物=場所・施設・備品・消耗品
  資金・情報等

行政による支援だけでなく、市民による支援もある。市民活動・学習支援等を目的とするNPO・市民団体による独自の支援、市民参加・協働による支援である。

☆支援の視点

市民一人ひとりの意欲・能力を最大限に引き出す(ファシリテーション)。
 *ファシリテーション(facilitation) 容易にすること、促進すること。

まちづくり活動に必要な知識・技能の習得、能力の開発・向上を促進する(学習支援・教育・研修)。知識は、断片的な情報を読み解くための体系的な情報である。講義・講演を聴くだけでなく、調べ学習(情報の収集・調査研究とその成果の発表)が必要である。

市民の時間を節約する。時間を有効に活用する。市民は、まちづくりのためだけに生きているのではない。

市民相互の協働・ネットワーク化を促進する。その形態には、市民(個人)相互の連携・協力(ゆるやかな集まり)、特定非営利活動法人その他の団体の設立・運営、団体相互の連携・協力(ゆるやかなネットワーク)、団体相互の連絡団体の設立・運営等がある。団体には、恒常的なもののほか、解散時期の定めのある団体(時限設立団体・プロジェクト組織)がある。

市民交流センター、コミュニティセンター、公民館、図書館等が、市民活動・学習支援センターとしての役割も果たす。

まちづくり活動の「血液」である資金や情報の流れに留意する。

資金については、税制、基金の整備、補助金等による支援のほか、NPO・市民団体の収益事業の促進、コミュニティビジネスの振興等、市民独自の資金調達力の強化が必要である。

情報の共有なくして、参加・協働なし。行政が保有する情報の公開・提供・共有はもちろん、市民が保有する情報の公開・提供・共有も必要である。それには、NPO・市民団体の活動状況等に関する情報が含まれる。

市民独自の活動・事業への協力、市の業務の委託等により、市民の活動機会を拡充する。その際、特定の団体に委託等が集中しないよう、全庁的な委託等の状況に留意し、契約機会の公平性の確保、過大な負担の防止等を図る必要がある。例えば、町会は幅広い活動を行っているため、行政はこれに依存しがちであるが、いたずらに行政への協力を求めることは、町会に過大な負担を与え、自発的な活動を行う余力を失わせ、完全に行政の下請け機関と化すおそれがあることに留意する。

市民活動・学習支援には、情報メディアの特性を踏まえ、多様なメディアを活用する。「(参考)情報メディアの体系」参照。

●市民参加・協働論

まちづくり・市政の総論・通論・各論について、政策階層、意思形成過程・政策形成過程の各段階において、市民と行政が議論し、実践する。
 *通論 まちづくり・市政の諸分野に共通することがら。
  縦割りの各論に対し、横割り。情報の共有、市民参加、協働等。
 *政策階層(政策レベル)
  政策−施策−事務事業(大主題・抽象的課題−小主題・具体的課題)
 *意思形成過程・政策形成過程
  調査研究→企画立案→意思決定→実施→評価
  実際には、このように単純、直線的ではない。

市民参加の体系↓/審議会等の諸類型↓/学習から始める市民参加↓/多様な市民の参加

◆市民参加の体系

市民参加は、参加者と主な情報メディアにより、市民集会、合議体等、意見公募等、抽出調査の四つに類型化できる。

     不特定多数/特定少数
空間系等 市民集会 /合議体等
輸送系等 意見公募等/抽出調査

空間系、輸送系等については、「(参考)情報メディアの体系」参照。

市民集会は、不特定多数の市民が、空間系等で参加する。例えば、だれもが自由に参加できる説明会、公聴会、ワークショップがある。

合議体等は、特定少数の市民が、空間系等で参加する。例えば、議会、行政委員会(教育委員会等)、審議会等、参加者を利害関係者等に限定した会合(町会長、地権者、保護者、関連する団体の関係者等だけの懇談会。)がある。

意見公募等は、不特定多数の市民が、輸送系等で参加する。例えば、市長への手紙・ファックス・メール(常時・一般型)、選挙(臨時・一般型)、市民投票、市民意見提出手続(パブリックコメント)その他の意見等の公募(臨時・特定型)がある。

抽出調査は、特定少数の市民が、輸送系等で参加する。例えば、市民意識調査(全市民指向型)、モニター(審議会等に近いものもある)、利害関係者等へのアンケート(特定市民型)がある。

不特定多数の市民が参加するものでも、実際には、参加者が少数であったり、固定化したりして、特定少数の市民が参加するものに近くなることがある。参加が少ない理由の一つには、行政への不信感やあきらめが考えられる(参加は形式だけで既に決まっている、単なるガス抜き、何を言っても金がないからできないのだろう等。)。

空間系等で参加するものは、電子掲示板、メーリングリスト等の利用により、電気通信系で開催することもできる。

市民参加を進めるにあたっては、それぞれの参加形態の特性を踏まえ、多様な形態を活用する。

◆審議会等の諸類型

審議会等は、いくつかの観点から分類できる。これに準じ、又は、審議会等の概念を拡張して、実行組織(例えば、町会長、市民学芸員。)もとらえることができる。

☆附属機関・非附属機関
法制度上の位置づけ、委員その他の構成員の身分等による。
附属機関
条例等を根拠に設置。委員等は、特別職・非常勤の職員(報酬を支給)。
非附属機関
要綱等を根拠に設置。委員等は、一般市民(謝礼等を支払うことがある)。

☆合議型・独任型
合議体を構成する一員として委員等を委嘱するか否かによる。独任型でも、単独で活動するだけでなく、定期的に合議することがある。独任型の例には、社会教育委員(附属機関)がある。

☆常設型・時限設置型
恒常的に設置されるか、設置期限があるかによる。制度上は常設型でも、長期間、委員が委嘱されず、実質的には時限設置型のものもある(例えば、基本構想審議会。)。

☆会議室型(議論型)・現場型(実践型)
会議室での議論が主体か、現場での実作業を伴うか、その活動形態による。
会議室型は、企画検討型、運営監視型、評価審査型に細分できるか。運営監視型は、企画検討、評価も行う。
企画検討型の例 基本構想審議会、次世代育成支援行動計画策定委員会。
運営監視型の例 情報公開・個人情報保護審議会、こども家庭福祉審議会。
評価審査型の例 情報公開・個人情報保護審査会、介護認定審査会。
現場型には、イベントの企画検討、会場設営、受付、司会等を行う実行委員会等が含まれる。

◆学習から始める市民参加

日常、生活・活動していて気が付く範囲での意見等は、陳情・要望になりがちである。それも大切であるが、同時に、自己の利害を超えた幅広い視野からの意見等、政策提言が市民に求められる(陳情・要望型市民参加から政策提言型市民参加への転換)。それには、地域・行政の実態の把握等、まちづくり・市政に関する学習(調査研究)が必要である。

常時、多様なメディアを活用し、まちづくり・市政に関する学習機会や情報を提供する。百年一日のごとく講座を開設するだけでなく、その記録・資料をビデオテープ、印刷物、Webサイト等で提供したり(空間系の輸送系・電気通信系への変換)、関連する図書館所蔵資料、Webサイト等を紹介したりする。

重要な政策の企画立案にあたっては、当該主題・課題に関する学習機会や情報の提供に特に留意する。例えば、環境基本計画の改定の際には、その作業開始前から策定まで、環境問題に関する学習機会や情報を重点的に提供する。

審議会等の委員の選任にあたっては、事前に、当該審議会等の所掌事務に関連する内容の学習機会を提供する。

☆学習から始める審議会等参加モデル
当該審議会等の所掌事務に関連する内容の講座開講

講座閉講時期、委員公募、受講者へ積極的な応募の呼びかけ。

委員選任、受講者以外の委員へ参考資料として講座の記録・資料を配布。

審議会等の開催

◆多様な市民の参加

多様な市民、特に、まちづくり・市政に比較的かかわりの少ない市民の参加を促進する。例えば、青少年、女性、障害者、外国人等である。子育て支援等、分野によっては、男性の参加が少ない。

ニートの社会参加、失業者・低所得者の就業機会の提供等、社会・労働政策の視点の導入も検討する余地があろう。
 *ニート(Not in Employment, Education or Training)
  就業も就学も職業訓練もしていない若者

●市民参加のシステム設計

「市民参加・協働論」(通論)に対する市民参加・協働論の各論である。ここでは、まちづくり・市政の総論・通論・各論について、市民と行政が議論し、実践する場、まちづくりの組織を検討する。多分に未検討である。

☆総合政策に関する参加システム

自治基本条例の運用状況の監視・評価、改正案の検討。
総合計画(基本構想・基本計画・実施計画)、行政経営改革指針(行財政改革大綱)、行政経営改革行動計画等の進捗状況の監視・評価、改定案の検討。
情報公開、個人情報保護、広報広聴、電子自治体等、総合的な情報政策の企画検討、監視・評価。
身近な地域からのまちづくり・地域政策の企画検討、監視・評価。
 *ふじみ野・鶴瀬・南畑・みずほ台・水谷東の各地域ごとのまちづくり
その他まちづくり・市政一般に関する企画検討、監視・評価。

以上に関する参加システムとして、例えば、次のようなものが考えられる。
総合政策に関する市民集会(説明会、公聴会等)の定期的な開催
総合政策に関する意見等の公募
総合政策に関する審議会等の設置・開催

審議会等を設置する場合は、市民全体の意見等のとりまとめの場として機能するよう留意する。他の審議会等との連携・協力も必要である。審議会等を中核とする市民参加システムの構築方法の実際については、「富士見市市民参加及び協働推進市民懇談会のあり方・進め方」(平成17年6月15日提言)参照。

必要に応じ、例えば、情報政策や地域政策については、別途、市民集会、審議会等を設ける。

既存の審議会等は、整理する。廃止するものは、次のとおり。
市民参加及び協働推進市民懇談会
基本構想審議会
後期基本計画市民検討会議(時限設置型)
行財政改革市民会議
情報公開・個人情報保護審議会

存置するものは、次のとおり。
(仮称)経営戦略会議
情報公開・個人情報保護審査会

☆まちづくり・市政の各論に関する参加システム

例えば、次のような大きな枠組みで参加システムを設計し、必要に応じ、サブシステムを加える。

都市計画・都市基盤整備に関する参加システム
経済・産業に関する参加システム
コミュニティ・共生・福祉に関する参加システム
生涯学習・教育・文化・スポーツに関する参加システム
自然・環境に関する参加システム

各論に関する参加システムでは、総合計画等の関連部分の進捗状況の監視・評価、改定案の検討も行う。自治基本条例の基本原則(情報の共有・市民参加・協働)、行政経営改革(行財政改革)等、通論の視点の導入も必要である。

●(参考)情報メディアの体系

情報メディアには、空間系、輸送系、電気通信系の三つがある。

空間系には、例えば、対話、会議、講義・講演、掲示がある。所定の場所へ行かなければ、情報を得られないという空間的制約が大きい。所定の日時でなければならないという時間的制約があることも少なくない。情報を一方的に受け取るだけでなく、その場で質問し、疑問点を解消したり、意見等を述べたりできる場合は、双方向性が高い。

輸送系には、例えば、文書・資料(紙・電磁的記録)、図書、雑誌、新聞、ビデオテープ、オーディオテープがある。情報が記録された物であり、運搬輸送が可能である。専用の装置が必要なものもある。公文書の原本等、所定の場所で所定の時間内に閲覧等をしなければならない場合は、空間系に近い空間的・時間的制約がある。公文書の写し、配布資料、購入した図書等は、閲覧等の空間的・時間的制約が小さい。文書で、質問、意見等を出す場合は、空間系よりも時間に余裕があるので、内容を整理しやすい。回答を得るまでには、時間を要する。

電気通信系には、例えば、電話、ファクシミリ、電子メール、Webサイト、テレビ放送、ラジオ放送がある。専用の装置が必要である。装置を利用できる場所という空間的制約はあるが、空間系ほど大きくない。時間的制約も一部を除き小さい。電話は、双方向性が高い。ファクシミリ、電子メールで、質問、意見等を出す場合は、文書よりも発信しやすい。Webサイトは、比較的安価に多くの情報を発信できる。

●関連ページ

市民参加・市民参画・市民協働について
平成15年7月22日、富士見市協働のまちづくり事業へ提案。
協働のまちづくりの政策形成過程への市民参加・市民参画
公共的・社会的なテーマに関する学習機会の充実
市政についての説明会、公聴会等の定期的な開催
附属機関(審議会等)の全面的な見直し
市民活動支援センターの開設

市民参加・参画・協働について
平成15年11月24日付けで、富士見市協働のまちづくり事業へ提言。
協働のまちづくりの政策形成過程の閉鎖性
学習権
職員の能力の開発・向上
金を使う行政から頭を使う行政へ
多様な年齢層の参画・男女共同参画
無作為に選ばれた市民の参画
多様な参画手法の活用
議会改革

審議会等のあり方・進め方
平成17年6月15日、富士見市総合政策部政策推進室へ提言。
Webでの提供にあたって
はじめに
議論の対象・方向性
名誉職の集まりから市民参加の場へ−市民参加を深める−
委員参加から市民参加へ−市民参加を広げる−
会議の公開等拡大懇談会・出前懇談会の開催意見等の公募

自治基本条例施行(@富士見市)
平成16年4月1日施行、富士見市自治基本条例の概要と全文。

協働のまちづくり条例検討中(@富士見市)
富士見市自治基本条例制定の経緯等(平成15年度)。

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