富士見市組織機構改革私案

提供開始:平成18年(2006年)8月3日

平成18年8月3日、富士見市総合政策部政策推進室へ提言。

Webでの提供にあたって
(総論)
副市長
理事・参事・課制
附属機関等
広域処理等
人事・研修改革
(各論)
地域政策と組織
共生・協働政策と組織
電子自治体・情報政策と組織
生涯学習政策と組織

●Webでの提供にあたって

これは、平成16年11月21日、富士見市行政経営改革指針(第4次行財政改革大綱)案についてのパブリックコメントで提言した「組織機構改革」を発展させ、平成18年8月3日、富士見市総合政策部政策推進室へ提言したものです。

同指針にのっとり、平成17年7月、企業経営等の専門家5人から成る富士見市行政経営戦略会議が発足し、平成19年度からの抜本的な組織改正のあり方を含めて、議論されています。同会議の動向については、@富士見市(fujimic.at.infoseek.co.jp/)の富士見市コミュニティフォーラム(FCF)で、お知らせしています。

(総論)

●副市長

地方自治法の一部を改正する法律(平成18年6月7日・法律第53号)により、平成19年4月1日から助役・収入役制は廃止され、副市長・会計管理者制へ移行する(副市長は条例で置かないことができ、会計管理者は一般職。)。内閣府地方制度調査会による、地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申(平成17年12月9日・www.soumu.go.jp/singi/pdf/No28_tousin_051209.pdf)を受けたものである。

市長が、政治家としてだけでなく、実務家としても十分手腕を発揮できる場合は、組織の簡素化の観点から、副市長を置く必要はない。

副市長を置く場合は、一般職職員OBに限らず、広く人材を求めて選任する。市長の権限を大幅に委譲し、市政運営の多くを任せることも考えられる。

法改正の背景には、アメリカ合衆国等に見られるシティマネージャー制(市支配人制)を念頭に市町村長の必置規定の廃止を求めた、志木市の構造改革特区構想(平成15年6月)があることに留意されたい。

●理事・参事・課制

部制を廃止し、課制へ移行する。ピラミッド型組織からネットワーク型組織へ転換を図る。

☆級別職務分類
職員の職務の級の分類を次のように改める。
理事
参事・課長(現行の部長・次長・課長級)
副参事・課長補佐(現行の課長補佐級)
主査(現行の主査級)
主任(現行の主任級)
主事(現行の主事・主事補級)

☆理事
市長(・副市長)を助け、市政運営を総括する職として、理事5人程度10人以内を置く。市長が民主的又は放任的リーダーシップをとる(職員の主体性に任せ、自らアイデアを出したり、指示したりすることが少ない)場合は、市長を後ろ盾とする理事による集団指導体制に近くなる。理事の中から改正地方自治法にいう会計管理者を選任する。

☆参事・副参事
政策法務、総合計画(基本構想・基本計画・実施計画)、組織機構、予算等に関すること、又は、特定の政策・事務事業の調査研究、企画開発、総合調整、評価等にあたる職として、参事10人程度以内を置く。参事を助ける職として、副参事を置くことができるものとする。参事・副参事に主査等を付することができるものとする。

理事・参事等は、市政全般を統括する市長(・副市長)のブレーンとなり、手足となる。市政のシンクタンク、コンサルタントとして、各課への助言、各課との共同研究開発等にもあたる。課と課の協働を進めるコーディネーターとして、縦割りの法制度や政策誘導等に引きずられやすい各課の連携・協力を図る役割も重要である。

☆課の編成
新しい課の編成は提示しないが、大枠としては次の諸部門について、それぞれいくつかの課を置くことになろう。

管理部門(人事・文書・会計、住民記録、租税公課、安全・危機管理等。)
都市計画・基盤整備部門
経済・産業部門
コミュニティ・共生・福祉部門
生涯学習・教育・文化・スポーツ部門
自然・環境部門

現行の総合政策部の課室は発展的に解消し、理事・参事・副参事・それに付属する主査等と、管理部門等の課が、その機能を果たす。

具体案の一部を各論として後述する。行政経営戦略、政策展望を描くことが、組織編成の前提となる。

●附属機関等

富士見市自治基本条例に基づく市民参加・協働のまちづくりを推進するため、附属機関等(審議会等のほか、町会長、市民学芸員等の実行組織を含む。)を「おまけ組織」から「もう一つの市役所」へ、議事機関・執行機関と並ぶガバナンス(共治)機構へと再構築していく必要がある。

市民参加の多様な形態を考慮しながら、市民と行政が議論し、実践する場、まちづくりの組織を編成する。「市民参加・協働の論点」(平成17年6月28日提出)の「市民参加の体系」、「審議会等の諸類型」、「市民参加のシステム設計」を参照されたい。

●広域処理等

一部事務組合、広域連合等による共同処理、構造改革特別区域の申請による必置規制の緩和、法改正の提言等を含め、組織機構のあり方を抜本的かつ継続的に見直していく。例えば、水道事業、監査委員等の事務の広域処理が考えられる。

●人事・研修改革

組織機構改革の成否は、組織の担い手である職員の働きに左右される。必要とされるのは、自らの能力を不断に開発・向上させ、進化し続けながら、まちづくりのファシリテーターとして、市民・職員の意欲・能力を最大限に引き出していける人材である。人事・研修のあり方が重要となる。

職員の採用に関しては、一般事務職(大学卒)採用試験に専門試験を加える。政治学、法律学、経済学、経営学等だけでなく、情報学、都市工学、社会福祉学、教育学、環境学等からも選択できることが望ましい。

政策プレゼン試験を加えることも考えられる。受験者が、新規政策・事業案や既存の政策・事業の改善案を事前に準備しておき、プレゼンテーション、質疑応答するというものである。提案内容だけでなく、コミュニケーション能力、人柄等も評価対象とする。

また、行政経営改革推進の即戦力となるような、民間企業等で豊富な実務経験を有する人材の中途採用を検討する。

職員の昇任に関しては、昇任試験で先述の政策プレゼン試験を行う。採用試験の場合よりも、市政の現状と課題についての認識度や提案内容が評価対象となる。

職員の異動に関しては、一般事務職の一部を準専門職として扱い、専門性を向上・発揮できるよう考慮する。

研修に関しては、自己啓発、自発的・自主的な調査研究活動を促進・支援するとともに、各職場において、まちづくり・市政のあり方等について自由闊達に議論できるような組織風土を醸成していく。

研修は、講義を聴く形式だけでなく、文献等による調査、討論、レポートの作成・発表等を取り入れる。受講人数は限られるので、講座の記録・資料をビデオテープ、印刷物、Webサイト等で提供し、より多くの職員の自主的な研修に資する。

☆富士見市自治基本条例(抄)
 (市職員の責務)
第11条 市職員は、市民全体の奉仕者であるとともに、自らも地域の一員であることを自覚し、市民との信頼関係の向上に努めなければならない。
2 市職員は、この条例の目的の達成のために必要な能力の開発及び向上に努めなければならない。

(各論)

●地域政策と組織

地域分権・身近な地域からのまちづくりの推進と、ふじみ野・鶴瀬・南畑・みずほ台・水谷東の各地域ごとのまちづくり推進体制の整備を図る。主な課題として、次の三つが考えられる。

☆地域まちづくり協議会(仮称)の設置
各地域ごとに設置。各地域の議会、行政委員会、又は審議会等に相当する。名称、権限(議決権・執行権の付与)、委員の選任方法等については、地域自治区(地方自治法第202条の4−第202条の9)等も参考に、検討を要する。

☆地域まちづくり計画(仮称)の策定と地域予算の編成
各地域ごとに策定。各地域の総合計画(基本構想・基本計画・実施計画)に相当する。市の予算のうち、一定枠を各地域に配分し、各地域の予算として編成する。

☆地縁団体等によるまちづくりの促進・支援
地縁による団体(町会、自治会等)、NPO・市民団体等による身近な地域からのまちづくりを促進・支援する。町会長・副町会長委嘱制度は廃止し、町会を完全民営化する。

以上の政策展望のもと、担当組織として、地域協働課を置き、後述の共生・協働政策を兼掌する。

地域政策の推進拠点として、将来的には、各地域ごとに、地域まちづくりセンター(仮称)を置く。出張所、市民交流センター、コミュニティセンター、公民館等は、これに統合・再編する。当面、市民交流センター、コミュニティセンター、公民館が、その機能を果たす。

●共生・協働政策と組織

年齢、性別、障害の有無、国籍の相違等によらず、だれもが、いきいきと暮らせ、まちづくりにかかわれるまちをめざす。例えば、次のものが含まれる。

地域福祉
子育ち・子育て支援(学校教育等を含む)
高齢者支援
男女共同参画推進
障害者支援
外国人支援
市民活動・学習支援(NPO・市民団体支援を含む)
市民参加・協働推進

担当組織は、先述の地域協働課である。地域協働課は、共生・協働政策一般、市民活動・学習支援(NPO・市民団体支援を含む)、市民参加・協働推進の総合調整等にあたり、多くの事務は、福祉、教育等担当各課で行う。

子ども若者課を置き、教育委員会・学校等と連携・協力しながら、青少年育成(内閣府系)、児童福祉(厚生労働省系)、幼稚園(文部科学省系)等に関することを一元的に担当する。ニート、フリーター支援、若者による市民活動の促進等、20歳代前後の市民の支援・社会参加の促進も守備範囲である。語弊もあるが、子育て初心者の親の支援等も若者支援の一環といえる。

先述の地域まちづくりセンター(仮称)は、共生・協働政策の推進拠点、市民活動・学習支援センターともなる。当面、市民交流センター、コミュニティセンター、公民館が、その機能を果たす。

●電子自治体・情報政策と組織

電子自治体の意義は、事務の効率化とコミュニケーション革命にある。アクセシビリティやユーザビリティ(利用しやすさ)に配慮しながら、紙媒体、電子媒体等の相違を問わず、情報メディアを統一的にとらえた文書・情報システムの構築が必要である。主な課題として、次の七つが考えられる。これらは、相互に密接に関連する。

☆文書・情報処理システムの再構築と運用
一般文書・情報系と特定文書・情報系の二つに分けられる。前者は、文書(電子メール等を含む)の収受・発送・保存、決裁・供覧(電子決裁、庁内メール等を含む)、公印(電子印を含む)等に関するものである。後者は、人事・給与、予算・会計、物品管理、住民記録、租税公課等、定型的で大量の文書・情報に関するものである。

☆行政手続き・収納決済の電子化
電子申請・届出、公共施設の電子予約、電子入札、税・手数料・使用料等の電子収納・電子決済等の導入・充実である。市民にとっても、事務の効率化につながる(平日昼間に窓口へ出向いたりせずにすむ)。

☆情報セキュリティ・個人情報保護
文書・情報の安全・危機管理等である。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの障害、不正アクセス、コンピュータウイルス、人為的ミス等による文書・情報の破損、流出等の防止が含まれる。

☆職員間の情報共有等の促進
グループウェアの活用等による職員間の情報交換・意見交換等の促進である。

☆市と市民の情報共有等の促進・地域情報化
情報公開(公文書開示)制度による(消極的)情報提供、広報紙、Webサイト等による(積極的)情報提供、市長への手紙・ファックス・メール等による広聴、NPO・市民団体等の機関紙、Webサイト等による情報提供の促進等、市と市民、市民間の情報交換・意見交換等の促進である。

☆電子自治体の人的基盤整備
電子自治体に必要な職員の能力の開発・向上、市民の情報リテラシーの向上、デジタルデバイド(情報通信技術(ICT)を活用できるか否かによる情報格差)の改善である。

☆電子自治体の技術的基盤整備
電子自治体に必要なハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク環境の整備である。

担当組織として、文書情報課を置く。広報広聴等は、地域協働課の担当とするのも一法である。現行の総合政策部情報政策課、総務部庶務課法規・情報公開担当、広報課は、原則一元化する。ただし、条例・規則案の審査等、法規事務は、参事が担当する。

文書・情報システムは、市の組織運営、意思形成過程・政策形成過程、仕事の進め方等と密接にかかわるので、参事、各課との共同研究開発が必要である。

職員間、職員と市民、市民間の対話、会議等の持ち方について、フェイストゥフェイスのものと情報通信回線を通じたものとをいかに効果的に組み合わせるかも課題である。

なお、情報メディアの全体像については、「市民参加・協働の論点」(平成17年6月28日提出)の「(参考)情報メディアの体系」を参照されたい。

●生涯学習政策と組織

生涯学習政策には、学校教育、社会教育、文化・スポーツ振興等が含まれる。組織設計にあたっては、教育委員会制度の廃止を視野に入れる。

現行の教育委員会制度のもとでは、教育委員の公募を含め、運営方法の改善が必要である。「富士見市市民参加及び協働推進市民懇談会のあり方・進め方」(平成17年6月15日提言)が、教育委員会議の運営にも参考となろう。

教育長を助ける理事一人を置き、市長を助ける理事(生涯学習・教育・文化・スポーツ担当)と併任とする。事務局は、総務課、生涯学習課、学校教育課の3課に再編し、生活環境部自治文化課の文化行政を生涯学習課へ移管する。市民交流センター、コミュニティセンターは、教育機関とする。学校教育関係を除き、市長部局へ移管するのも一法である。

地域協働課の学習支援は、市民活動、市民参加・協働に必要な研修的性格がある。生涯学習課は、教養、趣味、実用その他の学習一般を支援する。

市長のもとに一元化後は、生涯学習課、学校教育課の2課と生涯学習機関(学校、図書館等)を置く。市長の独善や暴走を防ぐ監視・牽制システム、議会、審議会等を含む市民参加のあり方が問われよう。

inserted by FC2 system